T 邸 

 

40年程前に大学進学で上京し、そのまま就職・結婚。自宅を神奈川に構えた。

実家の仏壇を管理するため、神奈川と沖縄を行き来する生活を長年続けてきた。

実家は、築70年前後のウチナーヤー。

「戦後、物がない中でおやじが造った家だからね、何とか残したかった」

しかし、老朽化が進み、維持管理が難しいことから建て替えを決めた。

設計は、古民家の調査で訪ねてきた建築士に頼んだ。

同じ糸満高校野球部のよしみで、意気投合したことも決め手になった。

「新しい家でも実家の名残を」という施主の思いに建築士はさりげな応えた。

雨端の下に敷かれた琉球石灰岩の踏み石などは、以前のままだ。

居間の中心に大勢集まれる造りも「前の家と全く同じ」と施主は満足している。

人懐っこい顔で「いつか、妻や子供達家族と一緒に暮らせたらいいな」・・・・

(週刊タイムス住宅新聞 第1515号より)